迷走、瞑想、競う、奇想。「生存」のタメの絵なのか、「絵」のタメの生存なのか。。。イラストレーターの「ロスジェネ時代」に奮闘(もうしない)イラストレーター!

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前回までツイッター上で連載していた超…就職氷河期物語。『KITIKU・SOHO師90』
ですが、連続ポストが時間的にも物理的にも、かなりの手間と労力がかかってしまう上に、構造上に受けての側にも
TLのエラーや見た目の問題などが発生してしまい、ご迷惑になってはいけないので、
急遽、こちらに仮連載することにしました、今後、今までの総集編が全編ウp状態になりましたら、

http://novel.fc2.com/novel.php?mode=ttl&uid=643232 に切り替えて
連載を続けていく予定ですので、お手数ですがよろしくお願いいたします。

では、今週のノベルはこちらからどうぞーーー


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あらすじ

バブル崩壊後の1990年代初頭、株価の暴落と共に突如始まった平成不況の波は中小企業経営者や新卒者らを追い込み、じわじわと真綿で首を締め付けるように日本社会に広まりを見せて行った。そして、その中で、1970年~1984年頃に「団塊世代、ポスト団塊世代のジュニア」として生を受けたXTX(エックスティーエックス)たちは、それまでとは打って
変わった厳しい就職難の壁に突き当たることになる。
約10年~15年もの長きに渡る「超就職氷河期」を生き抜いた
彼/彼女らのことを人々は「貧乏クジ」を引いた世代、「ロスト・ジェネレーション」と呼ぶ。

この物語は、その「氷河期の最中に」社会の中に放り込まれた幾人かの『ロスジェネ』たちと
取り巻く群像の、長い長い、「奇跡」なき迷走の軌跡…………。



超…就職氷河期物語。『KITIKU・SOHO師90』(18)
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「そろそろ、桜が咲いてるな……」

午前の温度はまだ時折、冷たい風を吹かせているものの、
晴れ渡っている穏やかな気候の中でで目を細めながら、XTXは
通りがかりに近所の公園の横に植わっている一本のソメイヨシノを見上げた。

一つの幹から左右にスラリと伸びた艶のある枝先が無数に空に向けて広がり、
枝分かれしているその先には、たくさんの先からピンクがかった
固いつぼみに混じって、幾つかが、既に待ち切れずに弾けたようにピンクの花弁を風に
揺らしていた。

(やっぱり、春が一番好きだな…特に特別なことをしてなくても内から湧き出るように
うきうきしてくる。)

まだ4~5分咲き程度でも、その桜は十分に通行人の目を和ませていた。

「さて、この魔法が効いている内に、一気に蹴りを付けてやろうっと!」


(※続きを読む から本編の続きへ入る)


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脇に抱えていたファイルを持ち直して、XTXは姿勢を正して街中を闊歩した。

(ここの文房具屋が一番安いから、えーと取り合えず100枚コピー…と)

少し暇そうにしているレジのおっちゃんにコピーを頼んで、
Xは待っている間、辺りを物色した。

(バインダー高いな……今日は消しゴムだけでいいか)

棚の下の方でしゃがみこんだまま、文房具を弄っていると、
後から入ってきた大学生ほどの男が、おもむろに背後から
声を掛けてきた。

「なあ、この商品いくらや?」

(店員じゃないっての……)

普通にいつものGジャン&Gパン姿だったとはいえ、
気安く店員呼ばわりされたことに、何故か気落ち
しながら、無言でXTXは立ち上がってその場を離れた。
事情を知らない男は、何故無視されたのか判らないまま、
しばし、きょとんとした顔で佇んでいた。

「お待たせしました、全部で1680円になります」

出来上がったチラシと文房具の紙袋を受け取ると、
その足で本屋に向かった。

(そんなに町の『何とか屋さん』に馴染んで見えてたのかなあ……)

能天気そうに見えても、どこかで今までの学業の中で刷り込まれてきた
ホワイト・カラー的な上昇志向に乗る事が
『清く、正しく、美しい仕事』への道だと思っていたXTXには、
あまり振るってなさそうな地味な下町風の文房具屋で店員に
見られたことが、露骨に格好悪く思えていた。

「募集の条件…短大卒以上かそれと同等の………」

マンションに戻って、求人情報誌を見たXTXは、その場で
愕然とした。大手の広告会社の殆どが、大卒並の学歴を
要求する中、自分の勝負できるラインが最初から、弾かれていた
ことを一通り確認すると、部屋の隅にそれを放り投げた。

「会社に家庭の経済的な理由なんか言っても相手にされないし…
もう、ここで仕事をみつける為にお金は使ってしまっている……」

学校に復学するための資金を今から貯め直しても時間的には
間に合わない。この国の今の現状が個人の資質の『可能性』と言う名の
能力を育てることなく、未だにミエミエの学歴信仰に偏っている理不尽さを
噛み締めながら、今更家族を恨んでも
仕方が無いと、XTXは首を振って気を取り直した。

「幾ら会社の宣伝用のイラストとはいえ、
学歴だけで名画が描けるもんか、アホか……」

実家の画廊の巨匠の画を幾つか思い出しながら、XTXは
独りで口に出して不服を言い立てることで、少し心の奥のわだかまりを下げた。

「いいよ、絵を描いて生計が立てられればどんな方法でも
構わないんだから」

バイトの賃金が今の都会での高い生活費では足りないことを考えると、
それとは違うやり方で探した方が早い。XTXは未熟な社会経験の中で
必死になって一晩、方策を考え抜いた。

「えーと、下準備はこれで万端かな……」

XTXは机の前で立ち上がって、上から覗き込むようにして、着替えながらファイル類を確認した。

スーツは、例えパンツルックでも自分には似合わないと思っているし、
何か窮屈でバカらしい格好をさせられているような気分にさせられて
いるのでどうでも良かったのだが、会社を巡るのにラフな格好では流石に
不味いので、Xは仕方がなく入学式の時に母から買って貰った
黒と白のストライプの上下を着込んだ。

(これで少なくとも文房具屋の御用聞きには間違えられない…と思う。)

普段は男物と女物の服を混ぜて着込んでいたので、自分が人から見られて
何者の『性』かを強調する『偏向』した衣装が気持ち悪くて仕方がなかったのだが、
一時の辛抱だと自分に言い聞かせて、XTXは街中に繰り出した。

(着いた…!ここから…落ち着いて入ろう)

前もって前日に電話を入れておいた大阪市内の出版社に辿り着くと、
高鳴る動悸を抑えて、インターホンの呼び出しを一回押した。

『はい、ご用件はなんでしょう』

数秒間、間をおいて少し大阪弁訛りの受け付け係の女性がインターホンに出た。

「あの、前日お電話でご連絡させていただきましたXTXと申します、担当の
佐藤さんに3時の約束で、えっ、参りました…!」

慣れない敬語を噛んでしまい、内心しまった…!と思いながらも、
Xは何とか面談場所の事務所に通された。

「へー、岡山からわざわざ、それはご苦労さまです」

「いえ、今はまだ市内のマンションに一人で住んでおります」

「まだお若いのに頑張っておられるんですね、では
ファイルを見させて貰っていいですか?」

「あっ、そんなことはないです、はいどうぞ…」

学校刊行物を中心に取り扱っている会社に殆ど飛び込みに
近い形でアポを取って、XTXは生まれて始めての面談に対峙した。

「うちは学校関係のテキストが中心なんですよね、お読みになられた
ことはありますか?」

パラパラと手描きとコピーの混ざったファイルを捲りながら、
びしっと堅いスーツ姿の恰幅の良い編集長の佐藤は、細身で
畏まっているXTXに質問した。

「えっ、はい…書店のコーナーで拝読させていただきました
中身もわかりやすくまとまっていて勉強しやすそうだと思いました」

普段のバイトなどの面接とは比べ物にならないぐらいに緊張しながら、
Xはなんとか意見を述べた。

「そうですか、ありがとうございます。ほー、なるほど……」

「はい……」

手元の取っ手のないお茶のカップを両手で持ち上げたまま、XTXは頷いた。

「そうですか、まだ若いですからこれから頑張ってください」

最後までページを見ると、佐藤からポンとファイルを返されて、
XTXは少し顔色を変えておずおずと尋ねた。

「えっ、はい?あの、こちらでワタシのイラストを使っていただけませんでしょうか」

「うちも小さな出版社だからね、残念ながら、イラストの募集は
あんまりしてないんです申し訳ない」

「そうですか…あの、こちらのチラシをどうぞ」

「いただいて宜しいのですか?」

「はい、どうぞ……」

「今日はお忙しいところをわざわざありがとうございました」

「頑張ってくださいね」

「はい……」

帰り際にもう一件、飛び込みで持ちこみをして、すげなく断られた
XTXは泣きたくなりそうな気持ちを抑えて帰路に着いた。

(厳しいな……イラストが要らないなら初めから会わなきゃいいのに……!)

10年目のプロでも難しい飛び込み式の営業を、ズブの素人が初見で成功
する確立はとても低いのだが、そんなことには全く無知なXは負けん気だけで、
がむしゃらにこの方針で行こうと決意を固めてしまっていた。

「桜綺麗だな…明日は午後に一時間だけスケッチするか……」

ファイルに追加するスケッチの素材を眺めながら、帰りの道で
XTXは誰にも見られないようにしながら、悔し涙を零した。

(此処に電話がないと本当、不利だな……)
マンションで自分の作ったチラシのコピー具合をチェックしながら、
XTXは何度目か判らない溜息を零した。

(適当にチラシを配っても安くないコピー代の無駄遣いだし、第一
電話がなければ誰も問い合わせの連絡なんてくれないよ…っ)

連絡先で電話が県外の実家にしかないと言うハンディに加えて、
期日が残り3週間程になり、気持ちばかりが焦っていた。
今までのバイトの面接では、先方に指定の日にこちらから合否を聞いて
クリアしていたが、今度ばかりは正規社員なので、そんなやり方では
通用しなかった。

(なんで、こんなに突然貧乏になってしまったんやろ……)

XTXの高校卒業時まで、母の営業能力は非常に逞しく年の売り上げは
なんと、一人の稼ぎで1000万を超えていた時期があったらしいと聞き及んでいた。
それなのに、何故寄りによっていきなりこんな破目に陥ってしまったのか……。
幾ら昨年から不況と言われ出して久しい昨今とは言うものの、大阪に居たままでは
実家の詳細がさっぱり判らないのだが、さりとて今直ぐに家に戻るのは
強制的に今の自分の進路が終わりを告げることになると直感的に
悟っていた。

(もうこの際、大阪市内だけでなく、神戸辺りも視野に入れようか…本当は
上京できれば一番良いのだけど………所持金0だし、今の状態では誰もお金を
出してくれない……)

朝から溜息ばかりをついていたXTXは時計を確認して、外に出た。
(後、もう一件市内の出版社とかを当たったら、次は神戸の住所を
確認しよう……)

相次ぐ断りばかりの面談で、初心のプライドを切り刻まれながら、
XTXは市内の最後の望みにかけて午後のアポの準備の為に、
買出しに出た。

(あれ…?鳩がいる……)

ついでに帰りに朝食を買出ししてマンションに戻る途中の、
マンション裏のゴミ捨て場に、一羽のみすぼらしい鳩が止まっているのが見えた。

(何してるんだろう……動けなくなってる?)

まだ回収前の黒いゴミ袋の山の横に居る土鳩にの元へ、
鳥好きのXTXは躊躇することなくそっと近付いた。
鳩はぎゅっと目を閉じて羽毛を膨らますと、ぐったりとその場に座り込んでいた。
Xが間近に近付いて覗き込んでもまったく反応しなかった。

「病気かな……どうしよう、そこに動物病院があるけど」

後ろのビルに入っている動物病院の看板を見て、Xはその場所からじっと
動こうとしない鳩を見比べると、すぐさまマンションに駆け出した。

「待ってて、今、何か餌を持ってくるから、それから病院に行こう!」

部屋に戻ったXTXは鳩を入れる為の適当なダンボールの小箱と、
餌になりそうなパンの切れ端を持ち去ると、すぐに元のゴミ捨て場に
取って返した。

「………!」

Xがゴミ捨て場に辿り着くと丁度、ゴミ収集車がゴミを回収し終えて
走り去る途中だった。

「………。」

それを見送った後、XTXは箱に餌を入れてその場に近付いた。

「っ……?!」

その場に立って、XTXは一瞬息を呑んだ。

「居ない?!まさか……」

Xは道路沿いを走り去るゴミ収集車を眺めた。

「まさか…ゴミと一緒に回収して行った……?」

嫌な考えが頭をよぎって、XTXは、両手に手に空の小箱を抱えたまま、
ほんの一時呆然とした顔で
既に見えなくなったゴミ収集車の方角を見続けた。

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超…就職氷河期物語。『KITIKU・SOHO師90』隔週連載・次回に続く………。
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