迷走、瞑想、競う、奇想。「生存」のタメの絵なのか、「絵」のタメの生存なのか。。。イラストレーターの「ロスジェネ時代」に奮闘(もうしない)イラストレーター!

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第一章 (2) 『それが真実』後編 


フォークリフト型のロボットの起動を停止させて、ラーグは
2人の元に駆け寄った。

【ラーグ】
「今日から入った新人だから、悪いけど今日は
指導の方を頼むよ、オレは今から超光速で、
ソフィーKGまで行って来るから」

【ピトフーイ】
「何、そんなに慌ててるぅー?」

アガタを指差して紹介した後、あたふたと小型シャトルに
向かう社長の背後から、ピトフーイは軽い調子で声を投げかけた。

【ラーグ】
「シルキー社から、本日中にソフィーKGまで荷物を100個
届けて欲しいって頼まれたんだよ」

【ピトフーイ】
「はあー?本日まで?絶対間に合わないから
諦めろ」

【ラーグ】
「諦めてたら、次から仕事が来ないでしょ!!
オレ一人で行って来るから、頼んだよ」

【アガタ】
(大変そう、大丈夫かな?)

慌しく駆け出して、シャトル乗り込んだラーグを
見送った後、ピトフーイは倉庫の入り口前で、
所在無げに立ち尽くしたままのアガタを顧みた。

【ピトフーイ】
「じゃ、行こうか」

【アガタ】
「あっ、はいアガタです、今日から
よろしくお願いいたします」

ぺこりと頭を下げたアガタの横を擦り抜けて、
ピトフーイは物流運搬用の出入り口の直ぐ横の、
トイレのドアの鍵をカードを入れて開いた。

【ピトフーイ】
「3分したら、出て来るから事務所で待ってな」

【アガタ】
「えっ??はい……」


【ピトフーイ】
「まっ、今日は社長も居ないし、午前中は殆ど掃除ばっかりだな…
午後は少しだけ荷物が来るけど、たいしたことは無い」

【アガタ】
「そうなんですか?」

作業服に着替えた後、事務所の中でモップを手に、
手動式で床を磨いていたアガタは、直ぐ後ろでテーブルを
布巾で拭いていた赤毛の彼女を見た。

【ピトフーイ】
「今の内に倉庫内の様子を見ておくといいよ、
直ぐにイヤになるぐらい見慣れるだろうケド」

【アガタ】
「はい」

素直に頷いたアガタにピトフーイは、掃除の手を止めて
事務所内の白いボックスから黄色いカードを取り出して
彼女の前に差し出した。

【ピトフーイ】
「これがないとトイレにも入れないから」

【アガタ】
「ありがとうございます」

口元を軽く歪めて笑顔で手を差し出した、アガタの手の平から
わざとカードを真上に遠ざけて、ピトフーイは探る様に彼女の目を
じっと見ながら、にやりと歯を見せて笑った。

【ピトフーイ】
「嬉しそう…これが欲しい?」

【アガタ】
「えっ、あの、はい!」

手を出したまま、アガタは真剣に頷いた。

【ピトフーイ】
「社長には悪いけど、あんた変わってんなー」

【アガタ】
「えっ?そんな……」

詰まらなそうにアガタにカードを手渡すと、ピトフーイは
再び布巾を手に取って、机の周辺をゴシゴシ拭きだした。

【アガタ】
「………」

不安そうに眉を顰めながら、アガタはカードを上着の
ポケットに入れて、彼女にぶつからないように無言のまま
モップで事務所の床を磨いた。

【アガタ】
「………?」

いっこう進まない時計の針を気に掛けながら30分程が、経過した頃
アガタは倉庫内響く、騒々しいアラームに耳を傾けた。

【ピトフーイ】
「あっ、PIECEが呼んでるー、荷物が来たから行くよ」

【アガタ】
「あっ、はい」

掃除用具を雑にケースに放り込んで、ピトフーイはさっさと
事務所を後にした、その後からアガタはケースの蓋を閉めて、
俄かに慌しくなった倉庫内に向かった。

【ピトフーイ】
「そっちから流れてくる荷物に台の上の赤・青・黄の信号機
シールを貼って、横にある同じ色のスイッチで切り替えれば
勝手に流れるからね」

【アガタ】
「はい」

トラックからベルトコンベアー前に下ろされた大小さまざまな
箱を、入り口前のキャタピラーの付いたロボットが
次々に流してくるのを確認しながら、アガタは
言われた通りに、立ち仕事のまま荷物を振り分けていった。

【ピトフーイ】
「今日は2000個ぐらいか、思ったより多かったけど
2人いればなんとかなるね」

【アガタ】
「えっ?2000個ですか」

【ピトフーイ】
「まだ全然少ない方だよ、企業の掻き入れ時なんか一人で
10000個なんて日も有るから3日で逃げたやつも
居たよ」

【アガタ】
「えっ……」

後方で荷物に伝票を張りながら、ピトフーイは特に感慨も無く
呟いた。

【ピトフーイ】
「あたしが言うのもなんだけど、その若さで
良く此処に来る気になったね、手間が掛かる上に
出張付きなんて今時、有り得ない時代錯誤な
体制なのに」

【アガタ】
「いえ、それは……」

ベルトコンベアーの荷物の指定位置に正確に
シールを張りながら、アガタはニュースで
伝わってくる土星の近況をぼんやりと
思い浮かべた。

【ピトフーイ】
「あっ、いけないー休憩の後に、事務所の鍵を閉めるのを
忘れてたー、ま殆ど何も入ってないからいいか?」

昼を過ぎて、作業の流れが緩やかになった頃、ピトフーイは
作業服の袖口を気持ち悪そうに引っ張りながら、前方で
立ったままのアガタをちらっと見た。

【アガタ】
「あの…私が閉めてきましょうか?」

荷物の流れが途切れ途切れになったのを確認して、
アガタは微妙に視線を外しながら
彼女のオデコに目をやった。

【ピトフーイ】
「んー?まあ流れはゆっくりにしたけど、作業時間中は
止める訳にはいかないからね」

【アガタ】
「直ぐに戻ります」

【ピトフーイ】
「まあ、いいか数分ぐらいなら一人で出来る程度だから、
ほら鍵」

作業台から前方のアガタに向けて鍵を放ると、彼女は
それをキャッチして頷いた。

【アガタ】
「はい、それでは…」

【ピトフーイ】
「……」

ダッシュで駆け出したアガタは、ものの数十秒も立たない内に
所定の位置に戻って来た。

【ピトフーイ】
「早っ…」

【アガタ】
「あっ、鍵をお返しいたします」

【ピトフーイ】
「いいよ社長が帰るまで、あんたがそのまま持ってて」

【アガタ】
「えっ、でも?」

遠慮がちにコンベアーから顔を上げたアガタにピトフーイは、
にやりと口の端を上げて笑った。

【ピトフーイ】
「社長にも言っておくから」


夕暮れ時に2人きりで、倉庫内の片付けを済ませたアガタは
床を走るクリーナー・ロボを見ながら、
一日目が無事に過ぎたことに、ほっと一息吐いた。

【ピトフーイ】
「嬉しそう…」

【アガタ】
「えっ、そんなことは…」

苦笑いを浮かべたアガタの前で、彼女は邪魔な空箱を回収しながら、
大きな音を立てて乱暴にケースに放り込んだ。

【ピトフーイ】
「何か良いことがあったの?」

【アガタ】
「いえ、別に…特には」

【ピトフーイ】
「この辺、何にもナイからね」

両手の埃をぱんぱんと払って再び別のケースを拾い上げた
彼女の横で、アガタはほんの少し思案した後、
思い付いた事を口にした。

【アガタ】
「でも、今朝此処まで来る途中に路地でストーリート・
ミュージシャンの方が歌っていたので、聴けて良かったです」

【ピトフーイ】
「駅前ならたまに居るけどね、で、何の歌?」

【アガタ】
「確か、平和を願う反戦の歌なんかでした」

【ピトフーイ】
「うえぇーー」

【アガタ】
「……えっ?!」

クリーナー・ロボの横でぎょっとした目で彼女の顔を見た
アガタに、出していた舌を引っ込めて、ピトフーイは
特に静観な表情で続きを促した。

【ピトフーイ】
「で…?」

【アガタ】
「えっ?」

【ピトフーイ】
「どんな歌詞?」

【アガタ】
「あっ、はい…今朝聴いたばかりなので、うろ覚えですが…」

深く呼吸を整えて、自分を見ているピトフーイの前で
アガタは覚えたばかりのフレーズを復唱した。

『― 平和を信じた彼は平和な庭で撃ち殺された ―』

『― 未来を信じた彼女はバスの中で少年に刺し殺された ―』

『― 人が好きだと言ったあいつは、人と関わる仕事を
選んで銃で撃ち殺された ―』

『― 人はこの世で自分が最も「信じたもの」に、とどめを
刺される定めにあるのか ―』

『― 夢を信じた彼女はどん底の貧困に喘いだ ―』

『― 愛を信じたあの人は、恋人に暴力を振るわれた ―』

『― 芸術を信じた彼は皆にそっぽを向かれ存在を無視された ―』


『― 人はこの世で自分が最も「信じたもの」に、とどめを
刺される定めにあるのか ―』

『― 人はこの世で自分が最も「信じたもの」に、とどめを
刺される定めにあるのか ―』

『― 平和を信じたわたしは、あの日、平和な庭で撃ち殺された ―』

……………。

次の日の朝、アガタは昨日と同じコースで、倉庫を目指した。

【ウィンディー】
「チリチリー」

彼女の胸元のポケットに納まって
ウィンディーはゆらゆら揺れながら鳴き声を上げた。

【アガタ】
「ウィンディー、今日も大人しくしているんだよ」

歩幅も大きく、いつものペースで街道を歩きながら、
アガタは何となく昨日のストリート・ミュージシャンを
目で探した。

【アガタ】
「……(今日は居ないな…)」

倉庫に辿り着くまで入り組んだ路地を見詰めながら、
アガタは少しだけがっかりしたように、数度目を瞬かせた。

【アガタ】
(人通りが少ないから、別の場所に移動したのかな…)

【ピトフーイ】
「あっ、また来たんだ」

【アガタ】
「お早うございます」

倉庫の前で丁度、鍵を開けていたピトフーイは、彼女の
姿を見るとにやっと笑った。

【ピトフーイ】
「また、来たご褒美に今日はトイレの掃除もサービスして
付けて上げるよ、いつもは社長が率先してやってるけど、
まだ戻ってないからね」

【アガタ】
「はい、あの…今日は居ませんでした」

【ピトフーイ】
「何が?あの、背の高い男なら今日も休みだから
あたしと2人だよ」

【アガタ】
「昨日、通りに居た一人のミュージシャンです」

【ピトフーイ】
「ああ、諦めたんじゃねーの?」

【アガタ】
「………」

倉庫の出入り口を開放して、中にスタスタ入って行った彼女の
後ろをついて歩きながら、アガタは古めかしい倉庫の赤茶けて
色あせた天井を見上げた。

【アガタ】
「………」

その脳裡には、まだあの物悲しいギターのメロディーと共に
サビの歌詞がこびり付いていた。

『― 人はこの世で自分が最も「信じたもの」に、とどめを
刺される定めにあるのか ―』

『………それが真実』


【アガタ】
(あの人は諦めたのかな……)

【ピトフーイ】
「これでトイレを磨いてよ」

奇妙な棒を提示した静かな倉庫で赤毛の髪の
ピトフーイの声が響いた。
振り向いて頷いた後、再び彼女は天井を見上げた。

【アガタ】
(それとも…………)。


             (風の大使Ⅱ 第一章 続く )


アヒャァー、深夜が過ぎて日付がかわ;ってしまいました。
お待たせしました~大使の続きです。
拍手ポチポチありがとうございます
やっとアガタが主役的に色々動いてくれ出しましたonz
このまま、アガタのバイト繁盛記みたい
にならないことを祈りたいかな
またまとめてサイトに上げた時に、文節の切れ目は補充したりするかも
知れませんが、ブログだと5分アニメみたいな流れですねー


nl01.jpg


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